WHO-ITUが新たに難聴リスクの情報や安全基準を発表したので、騒音や音量について考えてみた
こんにちは!
3月に入って、僕と同い年の学生さんなどは就活の真っ只中だと思います。
こんな僕からで力になるとは思いませんが、頑張ってください!応援しています!
僕はと言ったら、大学院の結果を待ちながら、夏にインターンシップができたら良いなと思っています。
でも、夏休みは日本にも帰省したい… 色々と考えています。
さてさて、個人の日常の話はさておき、本題に入りたいと思います。
3月3日のWorld Hearing Dayを前にして、2月12日にWHO-ITUがオーディオ機器の安全基準を発表して、その1週間後頃から多くの日本のメディアが難聴について報道し始めたみたいです。
例えば、朝日新聞や読売新聞などが取り上げていました。
音、補聴器の研究をして、音楽が好きな自分にとっては重大なニュースでした。
上の記事にも書いてあるように、聴力は一度失ったら、取り戻すことはできないと言っても過言ではありません。
なので、今回は、WHO-ITUの基準を改めて紹介しながら、自分の見回りにあるオーディオ機器の音量について書いていきたいと思います。
ちなみに、朝日新聞の記事に"音楽機器"と書いてありますが、個人的にはこの呼び方には賛成していません。
なぜなら、最近の携帯やMP3プレイヤーなどからは、音楽以外の目的でも、機器から音を聞く場面が多いからです。
例えば、オーディオブックを聞く時や、YouTubeの動画を見るときなどなど。
このブログでは、従来の携帯やMP3プレイヤーなどをひっくるめて、オーディオ機器と呼ばさせていただきます。
WHO-ITUが定めたオーディオ機器の安全基準
先ほども書きましたが、日本のメディアもWHO-ITUが新たに安全基準を発表したことを報道していました。
ですが、メディアが注目したのはWHO-ITUが公開した将来的に起こりうる難聴の統計についてで、具体的にどういう基準が定められたかはあまり報道していないような気がしました。
なので、ここでWHO-ITUがどういう安全基準をオーディオ機器に定めたかをまとめたいと思います。
WHO-ITUが発表した基準には4つの安全機能をオーディオ機器に搭載するように勧めています。
その4つの機能が以下の通りです:
- 音の許容限度を設定できる機能:ユーザーの音量と聞いている時間を基準の許容範囲と比較して、そのデータを割合としてユーザーに表示する。
- 個別プロファイル:個人個人に適したプロファイル、ユーザーの使用情報をもとにどのくらいユーザーが安全に・不安全にオーディオ機器を使っているかをユーザーに認識させる。
- 音量制限のオプション:音量を制限するオプション、自動的に音量を制限する機能やペアレンタルコントロールによる音量制限の機能を含む。
- 一般情報:オーディオ機器や他の活動をするとき、安全に耳を使うための情報やガイドの提供。
以上、WHO-ITUが定めたオーディオ機器の安全基準でした。
あと、読売新聞の記事にも書いてありましたが、WHO-ITUが考える安全なリスニングの音量と時間は、80dBの音を1週間に40時間以下に収めると判断しているみたいです。
この基準は、OSHA(アメリカの厚生労働省みたいな組織)が定めている、労働環境での騒音の基準よりも少し厳しいです。
OSHAが定めている基準では、90dBA*の音を最高で8時間、そして、5dBA*増えるごとに、騒音と触れ合う時間を半分ずつ短縮しないといけないと言われています。
また違うアメリカの労働環境を研究する機関(NIOSH)はもっと厳しい基準を勧めていて、85dBA*の音を最高で8時間、そして、3dBA*増えるごとに、騒音と触れ合う時間を半分ずつ短縮しないといけないと言っています。
NIOSHの基準を守ると、騒音が100dBA*ある環境では最高で15分間だけ働いても良いということになります。
WHO-ITUのが発行した基準やOSHAの基準をもっと詳しく読みたいという方は、以下のリンクを見てみてください!
WHO-ITUが発表した基準について:
New WHO-ITU standard aims to prevent hearing loss among 1.1 billion young people
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/280085/9789241515276-eng.pdf
OSHAの基準について:
https://www.osha.gov/SLTC/noisehearingconservation/loud.html
*dBAは、dB(デシベル)と違い、A-weighted decibel と言います。"A-weighted"については、次のセクションで少し説明します。
人間は全ての周波数を均等に聞こえている訳ではない
皆さんは、Equal-loudness contour(等ラウドネス曲線)のことをご存知でしょうか?
以下のグラフみたいなのをEqual-loudness contourと呼びます。
Equal-loudness contour - Wikipediaより
このグラフは、x軸に音圧(dB SPL)、y軸に周波数(Hz)を用いていて、1つ1つの等曲線が人間が感じる音の大きさ(phon)を示しています。
例えば、60phonの音を聞いていると感じるためには、1000Hzで60dB SPL、200Hzで70 dB SPLの音圧が必要だとグラフから読み取れます。
このグラフから分かるように、人間は、同じ音圧で音が流れていても、低音域の音を中音域の音よりも小さく感じます。
そして、グラフからさらに読み取れることは、音量が小さくなれば小さくなるほど、低音域の音量が小さくなる率が中音域の音量が小さくなる率よりも大きくなるということです。
60dB SPLで感じる低音域と中音域の音量の差は、100dB SPLで感じる低音域と中音域の音量の差よりも大きいということです。
なので、低音域を重視する若者たちがより大きな音量で聴きたくなるのもよくわかります。
あと、音楽の面から1つ言うと、低音域の音は一般の人はそんなに聞いていないということです。
このことに関して、先日、以下のようなツイートをしました。
Low frequencies are overrated.
— IVEY (@imNeocs) 2019年2月17日
(これについては、また将来の記事で取り上げたいと思います。)
前のセクションの備考に書いた、"A-weighted"は人間が中音域の方が低音域よりも聞こえるという現象に関係しています。
"A-weighted"では、人間が全ての周波数を均等に聞こえないことを配慮して、中音域の音が強調されるように音圧の単位を調整しています。
なので、dBAという単位は、普通のdB(デシベル)よりは人間の感覚に近い単位と覚えてもらっても良いかもしれません。
もっと詳しく"A-weighting"について読みたい方は、こちらからどうぞ!
実際、80dBとか100dBってどのくらいの音量?
さてさて、WHO-ITUの基準などを紹介してきましたが、実際、定められた音量とはどのくらいの大きさなのでしょうか?
読売新聞の記事では、80dBは救急車のサイレンの音と同じ大きさと書いてありますが、どの方向や距離から聞いたサイレンの音かは書いていなくて、あまりはっきりとはわかりません。
他にも以下のように、日常のものと音量を比べるチャートをインターネットで検索できますが、はっきり言って、オーディオ機器の音量と比較することは難しいです。
また、よくインターネットで見る音量の測定サイトやYouTube動画は、ホワイトノイズや1kHzのサイン波を使っていて、皆さん、僕も含めて、そういう音を聞いても、実際に音楽を聞いているときの音量との関係性が掴みにくいと思います。
あと、アップルなど機密情報として扱っているので、オーディオ機器からの音量の詳しい情報はあまり出回っていません。
そこで、今回、あまり正確ではありませんが、個人的に少し実験(検証?)をしてみました!
少しでも、皆さんの参考になったら嬉しいです!
実験で使ったもの
用意したものは、発泡スチロールの固まり、IPod Touch、イヤホン、そして騒音計です。
発泡スチロールの固まりは、なるべく外耳から耳介の構造を真似るため、騒音計の先からイヤホンの間が約2.5cm、騒音計の先からイヤホンの途中の空洞が約0.7cmの円になるように作りました。
イヤホンは、Betron ELR50を使いました。
イヤホンで実験した後、ヘッドホン、V-moda Crossfade、でも実験をしてみました。
騒音計は、A-weighted decibelで測る騒音計で、30dBAから130dBAの音量を測れるみたいです。
IPod Touchは、7th generationのもので、音量のリミターはつけていません。(個人的に制限されるのは嫌なので… 笑)
そして、以下の3つのボリュームでテストしてみました。
- スライダーの半分より少し小さいボリューム(いつも僕が使っている音量)
- スライダーの80%ぐらいのボリューム(一般的にネット記事などが勧めているボリューム)
- スライダー全開のボリューム
最後に、今回の実験で使った音源がこちらです!
この曲を選んだ理由としては、無料でダウンロードできるので、もし、皆さんも試してみたかったら同じような実験を繰り返せると思ったからです。
あと、せっかく音楽のブログなので、音源はきちんとした音楽を使いたいと思いました。笑
以下が、今回の実験のセットアップの写真です。
スライダーの半分より少し小さいボリューム(イヤホンの場合)
まずは、イヤホンで僕がいつも聞いている音量でテストしてみました。
写真でIPod Touchのスライダーの位置が確認できると思います。
テストをした結果、74dBA~86dBAぐらい出ていました。
いつも聞いている音量でも、WHO-ITUの基準を上回っていますね!
スライダーの80%ぐらいのボリューム(イヤホンの場合)
次にテストしたボリュームは、ネット記事などが勧めている、スライダーの80%くらいの音量です。
テストをした結果、89dBA~106dBAぐらい出ていました。
この音量は、WHO-ITUの基準を余裕で超えていますね。
dBの単位はログスケールなので、10dBAの違いでも大きく変わってきます。
スライダー全開のボリューム(イヤホンの場合)
さてさて、イヤホンで最後にテストした音量は、スライダー全開のボリュームです!
テストしていた際、イヤホンを付けていなくても曲が明確に聞こえていました。
テストをした結果、102dBA~118dBAぐらい出ていました。
音から痛みを感じ始める音量、Threshold of Pain(疼痛閾値)が120dBからだと考えると、スライダーを全開にして聞くのは恐ろしいですね。
スライダーの半分より少し小さいボリューム(ヘッドホンの場合)
次はヘッドホンでテストをしました。
発泡スチロールの固まりを僕のヘッドホンのスピーカー部分にはめてテストしました。
なので、少し音が漏れるような形でテストしました。
カップなどを使って外耳の部分を再現したら、ヘッドホンのテストはもっと正確にできたかと思います。
あと、ヘッドホンはイヤホンよりも振動がすごかったので、振動で騒音計が影響されないように、ヘッドホンの下にまた違う発泡スチロールの固まりを敷きました。
ともあれ、テストをした結果、僕がいつも聞いているボリュームで66dBA~82dBAぐらい出ていました。
ヘッドホンでは、イアホンよりもpinna(耳介)に直接音が当たらないので、4dBAの差は妥当かと思います。
スライダーの80%ぐらいのボリューム(ヘッドホンの場合)
次は、ヘッドホンでスライダーの80%のボリュームです。
テストをした結果、79dBA~85dBAぐらい出ていました。
スライダー全開のボリューム(ヘッドホンの場合)
最後に、ヘッドホンでスライダー全開のボリュームです。
テストをしている際、ヘッドホンの振動がものすごかったです!
テストをした結果、98dBA~114dBAぐらい出ていました。
検証のまとめ
検証の結果、僕がいつも聞いている音量でもWHO-ITUの基準の音量を超えていてびっくりしました!
ネット記事などが勧めている、スライダーの80%の音量でも基準を上回っていましたね。
ここで注意していただきたいことは、この実験は予め皆さんの参考になるようにと思って行った目安だということです。
音楽のファイル、使っている機材などによって、スライダーに対しての音量がうるさくなったり、小さくなったりします。
例えば、また違う無料でダウンロードできる曲で同じイヤホンを使ってテストをした結果、僕のいつも聞いているスライダーの位置で最高88dBA、スライダーの80%で最高105dBA、スライダー全開で最高119dBA音量が出ていました。
ちなみに、使わせていただいた曲はこちらです。
Big Roomの曲なだけあって、ミックスが多少うるさくなるように設定されているみたいです。
以上、検証結果でした!
ノイズキャンセリングヘッドホンも完全に良いわけではない
WHO-ITUの基準や従来のオーディオ機器の音量について書いてきましたが、具体的にどういう風に耳をいたわったら良いか、疑問に思っている人も多いでしょう。
インターネットで探していると、最近流行りのノイズキャンセリングヘッドホンが勧められているのをよく見かけます。
ですが、個人的には、いくらノイズキャンセリングヘッドホンを使っているからと言っても、耳をいたわっているとは思いません。
確かに、ノイズキャンセリングヘッドホンを使ったら、周りの騒音が従来のヘッドホンよりも聞こえにくくなるので、聞いている音源の音量は小さくできますが、それでも耳には負担がかかっています。
なぜなら、ノイズキャンセリングのほとんどが騒音の波と反対の波を耳に打ちはなって、騒音の圧力を耳に感じさせないようにしているからです。
これがなぜ問題かというと、騒音の波と反対の波を発するには、どういう音が鳴っているかという情報をヘッドホンが認識する必要があって、従来の技術では、まだ、リアルタイムでその情報を処理するのは難しいからです。
なので、いくらノイズキャンセリングだとは言っても、完全には騒音を打ち消せません。
あと、ヘッドホンによる音の認識が遅いので、衝動的な音も処理ができません。
これら以外にも、ノイズキャンセリングヘッドホンの問題点はあります。
個人的に1番恐れているのが、ノイズキャンセリングヘッドホンの使用によって起こる耳鳴りです。
ノイズキャンセリングヘッドホンを使っている際、人間が今までに親しみのない無音空間ができます。
日常の環境では、いくら静かでも多少の騒音があります。
なので、ノイズキャンセリングヘッドホンの無音の環境に慣れてしまうと、逆に耳が変な風に敏感になってしまう可能性もあります。
実際に僕の身近でも、ノイズキャンセリングヘッドホンを使い始めてから耳鳴りがするようになったという人もいます。
いくら勧められているからと言って、ノイズキャンセリングヘッドホンが完璧な解決策というわけでもないのです。
ここで、個人的な耳のいたわり方を2つ紹介したいと思います。
1つ目は、なるべく連続的に耳を使わないことです。
やっぱり耳を大事にするには、耳を休めることが1番大事です。
2つ目は、なるべくイヤホンを使わないことです。
ヘッドホンやスピーカーを使うと、音源と耳の間の空気の量がイヤホンを使っている時よりも多くなります。
間の空気の量が多くなることによって、音が拡散するので、耳への負担が少し軽減されます。
長々と書いてしまい、すみませんでした…
ですが、少しでも役に立ったなと思っていただけたら嬉しいです!
では、また次の記事で!